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曲目解説「ザ・プロデューサーズ」

ミュージカル「ザ・プロデューサーズ」は2001年の4月ににブロードウェイのセント・ジェームズ劇場にて上演が始まり、現在(2007年2月)でもその人気を保っている、まさにロングラン中のミュージカルである。そのミュージカルの原作と言えるのが、アメリカではコメディアン・映画監督などで有名な才人メル・ブルックスが監督した、30年以上前の1968年に上映されたコメディ映画「ザ・プロデューサーズ」なのである(ちなみにその時メル・ブルックスはアカデミー脚本賞を受賞した)。このミュージカルは、少し言い古されていることだが、「あの『オペラ座の怪人』や『シカゴ』さえ為し得なかった、トニー賞12部門を受賞!」というウルトラミュージカルとしての評価をまたたく間に得て、時はめぐり2005年に、メル・ブルックスは再びミュージカル映画としてこの作品をスクリーンに戻したのである。

このミュージカル映画での主演は、ネイサン・レインとマシュー・ブロデリック。共にブロードウェイの舞台超が付くほどのスターが主役を演じたが、この映画の特色は、他の主なキャストも同じ役や違う役でも、このミュージカルの出身者が占めていることだ。また、映画の監督及び振付のスーザン・ストローマンは、同じく舞台での演出・振付でもある。そして、当のメル・ブルックスは、映画では製作・脚本・作詞作曲の他、ハトや猫の声、おまけに映画の最後の一言で登場する。

しかし、このミュージカル映画を、予備知識なしで観た時には、ある意味カルチャーショックを浴びると思われる。「映画館の中でこんなに大っぴらに笑っていいのか」。筆者自身は、下ネタは全く苦手ではないが、下品なことこの上なし、恐らく字幕では表現しきれないようなアメリカン「ブラック」ジョーク満載で、まるで吉本新喜劇のごとく、ほろりとさせる場面でもどこかでズッこける演出。このミュージカルでは、主役の一人がネオナチの脚本家であったり、劇中劇で「ハーケンクロイツ(鈎十字章)」をつけたヒットラーとナチスが第二次世界大戦に勝ってしまう「我がドイツ帝国に春が、ポーランドとフランスには冬が来る」などという、有識者によっては眉をひそめる内容を大げさなパロディとして扱っている。また、ナチスの対極にある主役のユダヤ人自身の風刺、スウェーデン人やアイルランド人の発音をおちょくる、そして極めつけは、これでもかという「ゲイ」の人々の活躍等々…。間違ってもこのミュージカルには、「重厚さ」や「品格」の類の感動は得ることはない。

それでも素晴らしいのは、その音楽が、こんなにお下劣でおバカな歌詞なのに(メル・ブルックス作詞)、なんとも美しく、そして風刺に満ちているか(メル・ブルックス作曲)。そのメロディーは、例えばガーシュインやコール・ポーター、ロジャーズ&ハマースタインやバーンスタイン等々、かつてのミュージカルメーカーへのオマージュに満ちているようにも思える。また、劇中の台詞や小道具・ポスターには(時代設定は1959年である)同時代のミュージカルやそのパロディーがそこかしこに溢れ、ネタにしているのと同時に、メル・ブルックスが抱いているかつての巨匠へのリスペクトが充分感じられる。こういった大ヒットミュージカルに触れるにつけ、ブロードウェイというのは、前述の『Chicago』もしかり、こういった総合芸術としてのミュージカルを生み出す底知れぬパワーを持ち続けていることに感嘆の念を禁じ得ない。実は、上演されて間もない2001年の「9.11」、全てのミュージカルは中止を余儀なくされたが、わずか2日後、当時のジュリアード市長の「ニューヨークの象徴であるブロードウェイの灯を消すな」との要請を受け、他のミュージカルと共にパワフルに再開し、悲しみに暮れる観客に希望と明るさをもたらしたのであった。

《あらすじ》

時は1959年春のニューヨーク。ブロードウェイでも名高いシューバート劇場(※1)にて、今日もまたマックス・ビアリストックがプロデュースした最新作にして失敗作『ファニー・ボーイ』(※2)のグランド・オープン(初日)。しかしそれが終わるか終わらないうちに、観客達が劇場を後にして、駄作を口々に吐き捨てる。かつてマックスは「キング・オブ・ブロードウェイ」と呼ばれたヒットメーカーであったが、今や批評家からはボロクソ、初日=楽日の大失敗作メーカーである。

そのマックスの事務所にたまたま帳簿の整理に現れたのが、気弱な会計士、レオ・ブルーム。実はブロードウェイのプロデューサーになる夢を見ているが、所詮かなわぬものとあきらめている。ふとしたことからレオが、新作ミュージカルを上演するのに、「資金を集めて一晩で失敗すると差額で逆に儲かる」というからくりを発見、マックスはそのアイデアに飛びついて「芝居をたたんだ後はリオに高飛びさ!」と、一緒に組むこととなる。その為には、最悪の脚本・最悪の演出家・最悪の俳優とマックスの得意な資金集めが必要だ。

ネオナチのフランツ・リープキンの史上最悪の脚本「スプリングタイム・フォー・ヒットラー〜アドルフとエヴァのアブナイひととき」を発掘。そして、最悪のノンケ(ゲイ)演出家ロジャー・デ・ブリとその「内縁の助手」カルメンの元で、ロジャーの発案で「ドイツ帝国が第二次大戦に勝利する!」という筋書に変えることで演出が決定。程なく、レオ&マックスの事務所に、いきなり金髪でグラマラスで少し頭が弱いウーラがオーディションを受けるためにやってきて、お色気で(おバカな)ダンスを披露。当の男性2人は、下半身でのスタンディング・オベーションを行う。そして、マックスが、老いてなお精力旺盛な未亡人への色仕掛けで資金集めに成功し、最悪の俳優オーディションを終わると、ようやく「一晩で大失敗するミュージカル」の完成だ。

ところが、意に反してミュージカルは大ヒット、批評家も大絶賛。しかし、マックスは詐欺がバレて逮捕されてしまい、レオは良い仲になったウーラと本当にリオに高飛びしてしまう。牢屋で「リオ」から「レオ」の手紙を受け取ったマックスは怒りに震えるが、法廷でレオが突然戻って来て、仲良く二人そろって刑務所へ。

しかしその刑務所で、「プリズナーズ・オブ・ラブ」のショーを上演した二人に「歌と踊りで囚人に笑顔をもたらした」との事で州知事から恩赦を認められ、ブロードウェイに鮮やかに復帰したレオ&マックスは、かくしてめでたく最も成功を収めた「The Producers」となるのである。

〔注釈〕

 
(※1)ファニー・ボーイ:
名作ミュージカル『ファニー・ガール』のもじり。
(※2)シューバート劇場:
実在の劇場で、本来ロングラン劇場として知られる。現在は『モンティ パイソン スパマロット』という抱腹絶倒ミュージカルを上演、ちなみに2003年までは『Chicago』を上演。


 
   
 
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