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曲目解説「STAR WARS」

この超有名映画に対して、世の中の方々は、様々なスタンスをお持ちだろう。筆者の心境を申し上げると、例えば「総合芸術」というジャンルのうちで、演劇・映画・舞踊・オペラと比肩して、『STAR WARS』が存在するのである。言い方を変えると、クラシック・ポップス・JAZZ・等々そして、『STAR WARS』なのである。人からよく「それほど…好きか?」と問われることがある。いや、「好き」ということではなく、「もうすでに、そうなってしまっている」という、所謂好き嫌いを超越したものになってしまっている。自分にとっては、太陽系の惑星が水金地火木土天海(冥)とあるように、夜空を見れば月が煌々と太陽に照らされているのが見えるのと同じように、自分にとって『STAR WARS』が常に一定の位置に、しかも自分の傍にいるのだから、もはや仕方がないのである。

さて、色々な年代の方がこの作品をご覧になった時、どんな印象をお持ちになったのであろうか。筆者は幸いにして(?)最初期の『STAR WARS』の経験者ではあるが、若干通常と異なっている。日本では1978年に公開され、ご存じのような記録的な大ヒットとなっていたのだが、先に『STAR WARS』を知ることになったのは、ズビン・メータ指揮ロサンゼルスフィルの「スター・ウォーズ組曲」の「エア・チェック」(現在は死語?)であった。前年の1977年、アメリカでの映画公開後、その反響と音楽の質の高さにメータがジョン・ウィリアムズに管弦楽組曲としての改編を依頼、さっそくリリースされたものである。まず、「メイン・タイトル」の冒頭の単純にしてダイナミックなB♭ハーモニーの一撃、それに続くトランペットによる勇壮な「ルーク・スカイウォーカーのテーマ」。そして、「王座の間」中間部の優雅な長いフレーズ、当時既にトランペットを始めていた筆者(年が判る)は、すぐさまこの音楽のとりこになり、「いつかこの旋律を朗々と吹きたい」という思いを強く抱く原動力となったのであった。

そして、正確な時期は記憶していないが、既に音楽の魔力にとりつかれてしまっている少年が、遂に映像を観ることとなる。早速冒頭で例のタイトルロールが終わった後の、正にこれまでの映画の常識を覆すようなスケール感に圧倒されるのである。追いかけられる宇宙艇(レイア姫が乗船しているブロケッド・ランナー)を捕捉する超巨大な宇宙空母(帝国軍のスター・デストロイヤー)が登場する。これは、同様の印象をお持ちの方も多いが、通常、宇宙艇だけでも相当な大きさを感じているところに、見る見るうちに、画面横幅をも越えるサイズで空母がその姿を現す、という構図の斬新さに、「これは見たこともない映像である」と、観客はしてやられてしまったのである。筆者に至っては、まだ映像を観ないうちから音楽だけで引き込まれているのに、劇中殆ど止むことなくジョン・ウィリアムズの音楽が流れている中で、見たこともない映像、奇妙極まりない生物(クリーチャー)、胸躍る物語が展開されている。この時点で、筆者の『STAR WARS』に対するスタンスは決定してしまったのであった。

1980年公開の第二作が『エピソード5:帝国の逆襲』として公開された時点で、第一作の映画は、最初に作ったのに『エピソード4:新たなる希望』になるという事は当時はよく理解ができなかった。1983年に『エピソード6:ジェダイの復讐(後に「帰還」)』が公開された事で、一端この「スペース・オペラ」への盛り上がりは収束するかに思えた。しかし、1997年にそれまでの三作を「特別編」として、発達したCG技術やシーンの追加を施したバージョンを次々に公開し、ジョージ・ルーカスが「エピソード1〜3を製作・監督する」と発表、そして1999年の『エピソード1:ファントム・メナス』、2002年『エピソード2:クローンの攻撃』、そして2005年『エピソード3:シスの復讐』を観ることで、ようやくこの壮大な物語が、一つの大きなサーガ(叙事小説)による、非常に奥深い内容に基づいていることを理解するに至るのである。確かに、筆者を含む初期の『STAR WARS』の目撃者は、エピソード4・5・6の旧三部作(クラシック・トリロジー)の印象が強く、最新のCG技術をふんだんに使用したエピソード1・2・3の新三部作(プリークェル・トリロジー)への評価は分かれる事もある。しかし、映画としての『STAR WARS』はこれで完結し、もうこれ以上製作されないのだし、特に筆者にとっては、もはやこれは「映画」というジャンルではなく、『STAR WARS』というジャンルであるので、どれが良い・悪いという判断そのものが存在しないのである。

筆者にとって、この音楽との結びつきは、語り尽くせないのであるが、もう一つだけ。学生の時、たまたま高熱を出し、実家の自分のベットでうんうん唸っていた晩、たまたまFM放送で、来日していた外来オーケストラのライブ演奏をテレコ(これも死語?)でうつらうつら聞いていた。正規のプログラムの曲目はすっかり忘れてしまい、記憶があやふやだが、アンコールとして、モートン・グールドの、フォックストロットのリズムの可愛らしい、アメリカン・シンフォネット第2番から「パヴァーヌ」が演奏された後、アンコールの2曲目に、指揮者の「Darth Vader Mach!」の声に盛り上がった観客の拍手、そして間髪入れず始まった所謂「帝国のマーチ」の格好良さときたらもう!実はその時まで全曲をちゃんと聴いたことが無かったのだが、万雷の拍手までのあっという間に過ぎた3分間の後は、もう残るは興奮のみ。以来、この音楽は「自分が最も格好いいと思う音楽」の最右翼となった。言うまでもないが、そんな興奮状態では熱が下がるはずもなく、悶々とベットの上で過ごしたような記憶が残っている。

『STAR WARS』の音楽が、これほどまでに人々の心に残るのも、よく言われる事だが、ワーグナーが自身の楽劇で用いた「ライトモティーフ」の手法を用いている事に依ると考えられている。ストーリーや登場人物(キャラクター)と音楽(旋律)が一体になっており、例えば、前述の「ルークのテーマ」や「レイアのテーマ」「ベン・ケノービ(ジェダイ)のテーマ」「同盟軍のファンファーレ」「ヴェイダーのテーマ」「ヨーダのテーマ」「皇帝のテーマ」等々。これらの多くは最初の作品、エピソード4で登場人物を彩り、他の場面やエピソードで頻繁に形を変えて登場することによって、サーガとしての統一感を与えている。また、筆者のような初期の目撃者がその後の作品、特に新三部作を観ても、音楽の一節から当時の感激が蘇る重要なファクターになっているのである。その一端は、エピソード1のアナキン少年のテーマの最後や、ヨーダがアナキンの未来について憂うシーンで「ヴェイダーのテーマ」をさりげなく挟み込むというところにも、充分うかがえるのだ。

いったい、ジョン・ウィリアムズという作曲家はどれほどの才能を持っているのであろうか。彼の名前を見ることが出来るのは、何もこの作品だけではなく、『ジョーズ』から最新作『ミュンヘン』に至る殆どのスティーヴン・スピルバーグ監督作品、『ハリー・ポッター』や『ホーム・アローン』『スーパーマン』のようなファンタジー作品、ロス・アトランタ・ソルトレークシティの3つのオリンピックやスポーツ番組のテーマ等、枚挙にいとまがない。我々は、今なお映画音楽の第一線で活躍する彼のような巨匠と、同時代に生きている、という幸運に感謝をしなければならないのかも知れない。

 
   
 
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