ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」について
ジェリー・ボック作曲、シェルダン・ハーニック作詞、そしてジェローム・ロビンス振付の「屋根の上のバイオリン弾き」は、アメリカのミュージカル史上に残る傑作です。
ショーレム・アレイヘムの短編小説「牛乳屋テヴィエ」を原作として作られたミュージカルですが、ウクライナの架空の村「アナテフカ」でつつましく生活しているユダヤの人たちが、やがて帝政ロシアから迫害され、離散しながらも、力強く生きていく姿を描いています。
題名の「屋根の上のヴァイオリン弾き」とは、どんな目にあおうとも我々は平静を保って屋根の上で愉快にヴァイオリンを弾く、すなわちユダヤ人の不屈の魂の象徴として、主人公テヴィエが語っています(とらえ方は人それぞれですが)。
1964年ブロードウェイでの誕生以来、大成功を収めたミュージカルですが、その後世界中で上演され、日本では森繁久彌さんが長く主人公テヴィエを演じたことでも有名です(その後、西田敏行さん、市村正親さんが同じ役を演じています)。
傑作ミュージカルの映画化とジョン・ウィリアムズによる編曲
このミュージカルを1970年初頭に映画化する決定がなされた時、ノーマン・ジュイソン氏が監督、そして映画にふさわしいサウンドにするための編曲者として、若きジョン・ウィリアムズ氏が指名されました。
ジェリー・ボック作曲のミュージカル原曲以外にも、映画のために追加の作曲をしたJ・ウィリアムズ氏は、「不滅のヴァイオリニスト」であるアイザック・スターンがソリストとしてサウンドトラックに参加する幸運にも恵まれて、この作品でアカデミー編曲賞を受賞するのです。
こういった「編曲」作業をする事について、J・ウィリアムズ氏が「他人の音楽をオーケストラ用に編曲するのは、自分自身のメロディーを生み出す技能を磨くのにとても役に立つ」と後に語っています。
「屋根の上のヴァイオリン弾き」抜粋について
今回演奏するコンサート・ピースにまとめられた抜粋=メドレーは、J・ウィリアムズ氏がボストン・ポップス・オーケストラと共に演奏するために作られました。
音楽の前半では、実は映画のインターミッションで流れるものとほぼ同じです。
イントロに続き、
「もし金持なら」If I Were a Rich Man
「人生に乾杯」To Life
「奇蹟の中の奇蹟」Miracle Of Miracles
「サンライズ・サンセット」Sunrise, Sunset
「結婚仲介人の歌」Matchmaker
「伝統(しきたり)の歌」Tradition
上記の曲が、次から次へとメドレー形式で登場します。
そして”Tradition”で音楽が大盛り上がりした時に、突如ヴァイオリン・ソロが登場、ユダヤ音楽の音階に基づいたカデンツァを奏でます。
その後、結婚式の後の踊りのシーンでの「ボトル・ダンス」の音楽によって、ヴァイオリン・ソロとオーケストラの競演がどんどんヒートアップし、力強く音楽を閉じるのです。
この音楽を「いま」演奏する事
楽曲自体は、ミュージカルで歌われる名曲をギュッと凝縮した、激しくて明るくて楽しい音楽です。メドレーと共にヴァイオリンの妙技も味わえて、公演の第2部の締めくくりに最適な一曲だと思います。
しかし、このミュージカルの舞台は帝政ロシア時代の「ウクライナの村」であり、その地に暮らすユダヤの人たちを描いた物語です。ミュージカル初演からちょうど60年が経った今年、再び21世紀の現代に、ロシア社会そしてユダヤ社会と周りとの関わりについて、問題提起をされているような気がします。
そういった意味で、我々はこの音楽の精神をできるだけ汲み取って、真摯に演奏に取り組みたいと思っています。
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