映画「アンジェラの灰」~原作とジョン・ウィリアムズ
この作品の監督を務めたアラン・パーカー氏は、1971年に原作・脚本を務めた「小さな恋のメロディ」(特に日本で大ヒット)で注目を浴び、その後「フェーム(1980年公開)」などの名作を生み出しています。
そして、本作は1996年に刊行された、フランク・マコート氏の子供時代の回想録を原作としています。この作品はピュリッツァー賞を受賞しベストセラーとなりました。
舞台は1930~40年代のアイルランドの地方都市。極貧の生活の中で次々に亡くなっていく兄弟や職に就かない父親の姿など、見ているこちらが辛くなるようなシーンが続きますが、そんな中でもユーモアを忘れず主人公フランクが子供から少年に成長する姿に励まされます。
実はジョン・ウィリアムズ氏は映画制作の数年前に原作を読み、かねてから興味を持っていて既に監督に内定していたパーカー氏とロンドンで会合を持ちました。その後正式に映画音楽の担当を受け持った際にも、J・ウィリアムズ氏は「とてもゾクゾクする、こんな素晴らしい本に音楽をつけられるなんて光栄だ」と語ったとの事です。
「アンジェラの灰のテーマ」楽曲と情景
コンサート・ピースとして作られたこの楽曲は、映画冒頭の雨のシーンから始まる、やるせない思いを表すようなピアノの単音のソロで始まります。
フランク・マコート氏の子供時代(1930年代)、このアイルランドのリムリックという土地はとにかく雨が多くて水はけが非常に悪く、うっそうとした風景にピアノソロがしみこむように流れています。
それと対照的に、慟哭(どうこく)するような弦楽合奏と物悲しいオーボエのソロの対比が、まさにこの物語の感情を深く揺さぶります。
この「慟哭」の音楽は、まず最初のシーンでフランクの妹が生後たった2日で亡くなる場面で奏でられ、次にフランクの双子の弟の一人が亡くなる場面でも音楽が流れます。そして、またもや双子の残った一人が亡くなる時にこの音楽が流れ始めると、思わず「もうやめてくれ!」と思ってしまう程、物語に没頭する効果を高めています。
「アンジェラの灰」映画中で使われているヒット曲
悲しいシーンが連続して、救いどころがないようにも思いますが、そこは子供時代から聡明なフランク・マコート氏と仲間の悪ガキたちのいたずらとユーモアが、映画を観る側の心のバランスを保ちます。
そういう時には必ずと言っていいほど、1930~40年代の当時のジャズ中心の音楽がシーンを彩ります。心地よいオールドファッションなジャズと、とりわけビリー・ホリディが何度も使われます。フランクの台詞でも「我が愛しのビリー・ホリディ!」と出て来るほど、マコート氏が大好きな事が良く分かります。
物語はフランクが知恵を絞って(多少良くない手を使って)資金を貯め、夢を求めてアメリカに旅立つところで終わります。あんなに辛い子供時代を過ごしても、周りの人の言葉や存在に影響を受けて、人はここまで力強く生きる事ができるのかと、考えさせられる物語です。
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