アロハ合奏団とは
それは、20世紀の終焉をあと4年ほどで迎えようとしていたあるとき、ある音楽系クラブを卒業した者同志の宴会での会話から始まりました。「アロハシャツ着てコンクール出ようか」。コンクールというのはこの場合、毎年夏から行われる吹奏楽コンクールを指します。早速、その姿は早速、翌年の夏、兵庫県の八鹿町にあるホールで、確認することができたのです。コンクールという場では、通常、黒い上着に黒いスラックスや、ワンピースを着用している、いわゆるフォーマルな服装が主流の中で、よりによって極彩色の「アロハシャツ」はひときわ異彩を放っているのは想像に難くないと思います・・・
それから、気がつけば20年を経ていました。ただ、「アロハ」を続けているうち、「アロハ」が「音楽」に対するスタンスが変化をしてきたことに、古くからのメンバーは気がついていると思います。それは、団体が20才、年をとったためか、また様々な環境が変わってきたからかは判りません。ただ、代表である私自身は、何かの音楽に取り組む際は、その音楽に対して出来るだけの愛情を込め、その音楽を作り上げた作者や時代に対してリスペクトしつつ、その存在に近づこうと心がけています。その上で音楽はしかめっつらをして「挑む」ものではなく、その断片であっても、自分自身が「楽しむ」方法を見つけることが不可欠であると思っているのです。
他のどんな音楽団体や音楽家も、皆さん「音楽を楽しむ」ということを忘れてはいないと思います。ただ、「アロハ」は自分たちはもとより、それ以上に公演やライブに足を運んでいただいたお客様に「今日は来てよかった」と感じて帰途についてもらうことを目的としています。演奏家の使命として、決して仲間うちだけの楽しみに没頭するのではなく、聴いて、観て頂く様々な世代のお客様に「楽しい」と感じていただく為に、自分たちが「思いっきり楽しめる」為の準備を怠らない、これが何よりも大事と思っています。
そろそろお分かりでしょうか、「アロハ合奏団」は、ハワインアン・ミュージックを演奏する団体、というわけではございません。音楽の、一形態である「吹奏楽」や「管弦楽」などを母体とした、観客と演奏者とが「楽しい瞬間」を共有することを真剣に求める音楽団体、と言えるでしょうか。私どもが「アロハ」を冠するのは、単なる挨拶以外のたくさんの意味を持つハワイ語としての「アロハ」であり、「アロハシャツ」を着ているのは、色々な音楽の楽しさを服装でも表現していると、お考え下さい。様々なご意見があろうかと存じますが、服装がアロハシャツなのは、決して夏のコンクールに涼しく望みたいだけではない、ということをご理解いただければ、嬉しく思います。
アマチュア・プロを問わず、音楽をするものとして、自分たちのメッセージをお客様と共有できれば、こんな素晴らしいことはありません。折しも、この日本や世界では、あまり明るくない出来事をよく耳にする時代となってきてしまいました。大げさですが、「音楽の楽しさ・素晴らしさ」を感じる、心の余裕を持つ人がもっと増えれば、世の中が少しは良い方向に向かうのではないのかな、と考えたりします。そういう素晴らしさ、楽しさを追い求めて、私どもの活動を継続できればと思っております。